重要記事。バレエの体の使い方、全4種類解説、その2。バレエはX脚から生まれた。

今回は床を踏んで踊るタイプ2種類の説明です。

 

③まっすぐ垂直に床を踏むタイプ。

 

このタイプは、床を垂直に押し、土踏まずを持ち上げ、器用に床をつかみます。

そして床に対し、おなかやお尻で押し返し、体の土台を安定させることにより踊りやすくする、ということをしています。


前回書いた②内ももを使うためにおなかを引き上げるタイプと、今回説明する③まっすぐ垂直に床を踏むタイプは、やっていること自体は大差ありません。

 

先に引き上げて上から作るか。

先に踏んで下から作るか。

その順番が違うだけで、ほとんど同じです。

 

②が「引き上げると踏める人」、③が「踏むと引き上がる人」です。


よく、ある先生が「上」また別のある先生が「下」と言った時、言葉は違うけどほとんど同じことを言っている、という解釈があります。

これは②と③に関しては当てはまります。

ただし、②と④、③と④には当てはまりません。別のことを言ってます。

 

②も③も、脚からみぞおちまでが「まっすぐの体の土台」になります。

まっすぐ上下の直線バランスです。

その「まっすぐ」からバランスをはみ出せば当然バランスを崩します。

大きく表現するために体幹トレーニングをすると固い動きになります。

だから動きが強く直線的で、音楽を感じさせない踊りになりがちです。

 

以上の理由から引き上げやまっすぐ踏む方法で「しっかり踊る」ことは出来ても、しなやかに踊ることは不可能です。


床が正しく踏めると体が上下に完全に伸びるのですが、ほぼすべての人がそうなる前にバレエのレッスンをしたり体幹トレーニングをしてしまいます。


だから体が詰まったまま筋肉が発達して、体が上下に伸びなくなります。

これだと踏めないから伸びない、伸びないから踏めない。の繰り返しで上手くなることはありません。



まっすぐ踏むと、自分の強い意志で体をコントロールしやすくなるので、失敗しにくい踊りにはなります。

 


④しなりを転がして床を踏むタイプ。

 

クラシックバレエは本来この踏み方をします。

もっともバレエが踊りやすい踏み方になります。

何故なら「床を踏む」という一つの動作だけで、5番に入る、脚が上がる、という正反対の動きが出来るからです。

 

この踏み方ですしているのはマラーホフ、ニーナ・アナニアシヴィリ、ウリヤーナ・ロパートキナ、シルヴィ・ギエム、アレッサンドラ・フェリ、スヴェトラーナ・ザハロワ、ディアナ・ヴィシニョーワ、ナタリア・オシポワ、ポリーナ・セミオノワ、ヤンタンタン、イザベル・シアラヴォラなど。

彼女達はまっすぐではなく曲面で床を踏んでます。

 

私がビートで教えている踏み方です。

 

この踏み方をすると曲線的な踊りになります。

X脚の「X」を流して使うことで切れ目の無い円や球になるからです。

 

これが表現、質感、音楽性の違いとしてあらわれます。

 

全身が円や球のラインになり膝や肘が目立たなくなります。

膝と甲がバレエ独特の脚のS字ラインを作ります。

 

Xを流す、内ももを流して使うからシャネルのマークのような立ち方、軸です。

シャネルのマークのように内にしなってるので重力によって勝手に5番に入っていきます。

内ももでトングのように両脚を寄せる必要はありません。

だからふくらはぎは太くなりません。

 

この体の使い方は、条件=実力になります。

自分の条件以上の踊りは出来ません。

自分以上にも自分以下にもならない正直な踊りです。

ですから、とにかく自分の条件以上に脚を上げたい、条件以上に回りたい。そしてコンクールで一番になりたい、有名になりたいという性格の人には向きません。

体のケア、メンテナンスに膨大な時間とお金がかかります。

ストレッチ、マッサージ、鍼、骨格矯正、整体、温泉などが重要です。

 

 

生まれつき体が開ききった人(バレエに向いている人)は、落ちる体を持っています。

 

「落ちる」から引き上げでは踊れません。

踏むことでしか踊れません。

 

X脚で甲が出る人に引き上げは向いてないのです。

 

それなのに指導者から「あなたは膝がしなってるから落ちてしまうの、もっと引き上げてもっと引き上げて、脚はまっすぐに使って」と教えられると失敗します。若い頃の私のように。

 

そうやって生まれつきバレエに向いた体を持つ生徒を駄目にしてきたのが日本のバレエ教育です。

 

大半の日本人は踏めないので、バレエの体に似たものを作る教えが発達し、生まれつきバレエの体を持っていた生徒を教える方法は発達してきませんでした。

そうやってバレエ本来の踏み方ができない人達が考えたのが引き上げや、まっすぐ垂直に踏む方法です。

 

まっすぐのバレエにX脚は向きません。

上下まっすぐの力がくわわるとX脚の膝を押してしまい、怪我をします。

指導者自身がまっすぐの脚でX脚の生徒にどう教えて良いかわからないため「X脚はバレエに向いてない」と言い訳したりします。

海外にX脚のバレリーナはたくさんいますから「X脚はバレエに向いてない」というのは、自分の教えを正当化するための嘘です。

 

そもそもバレエ自体がX脚から生まれたダンスです。

 

続く。