前回の続きです。
踏めない人はみぞおちに支点がある。
軸は支点から下に振れる。
踏める人は膝下に支点がある。
軸は上に振れる。
ここまで説明しました。
人間は支点から下でバランスを取り、支点より上の姿勢をコントロールしています。
ですから踏めない人はみぞおちから下すべての関節を使ってバランスを取ります。
たくさんの関節を折り曲げてバランスを取る体です。
全身の8割をバランスを取るために使います。
悪い意味で全身運動のバレエです。
全身バランス運動です。
そして体の残り2割、みぞおちから上だけで表現します。
表現の幅が限られるので思いきり表現をしようとすると、わざとらしくなりがちです。
上半身は狭い空間で小さくしか動かせません。
平面的で不自由。
固い踊り。
誰が踊っても差がでにくい。
逆に言えばコールドは合わせやすい。
感情を込めて踊っても役者のように芝居をしてみても、動き(身体)に感情がのるのではなく、感情に身体をのせようとするので表現が不自然になるのです。
ここで皆さんに知ってほしいのが「バランスを取る」ために使う体の部分と「表現」に使える体の部分の比率です。
支点の位置がその境い目(さかいめ)になります。
「バランスを取る」部分が増えれば「表現」できる部分が減り、「バランスを取る」部分が減れば「表現」できる部分が増える関係性です。
踏めない人は「バランスを取る:表現」の割合が「8:2」です。
そして境い目の位置は、上半身と下半身の境い目と考えることができます。
つまり、支点=ウエスト=腰=体幹になります。
踏めない人はみぞおちから上が短い上半身、みぞおちから下が長い下半身です。
実際の骨格とは関係なく、体の中がそう動いています。
踏めてる人は「バランスを取る:表現」の割合が逆に「2:8」になります。
踏めてる人の支点は膝と足首の中間あたりにあります。
その支点より上にある関節はバランスを取るために使いません。
全身の2割だけで簡単にバランスを取り、残り8割で表現します。
全身の8割はバランスを取ることに関係無いのです。
だからといってもちろん体がまっすぐの固い棒になるわけではありません。
バランスを取るための全身の関節が、支点1箇所に集約されたような体です。
バレエダンサーの体に関節は1つしかないのです。
このように本来のバレエは全身運動ではありません。
凄く働いている部分があるぶん、実は休んでいる部分も多いのです。
休みながら踊っているというと誤解を生むかもしれませんが(休日が多いという意味ではないです)、西洋の人達はそのように踊るから沢山の公演がこなせるし、ダンサー寿命も長いのです。
上半身は広い空間で大きく自由に動かせ、踊りは立体的です。そして良くも悪くも個性があります。
支点を上半身と下半身の境い目と考えると、踏めてる人は長い上半身に短い脚です。
絵の赤く塗った部分でバランスを取る。上が踏めない人。下が踏める人。
次回は床を踏んで脚を上げるグランバットマンのコツです。
続く。