前回の続きです。
体の支点には力が加わるので重みを感じます。
ですから今回の記事では、支点=重心と考えてください。
もしくは空間固定点とか中心とか呼んでもいいです。
では今日の本題です。
スピードの遅くなったコマの軸が円を描き振れる運動のことを歳差(さいさ)運動と呼びます。
その歳差運動はコマの重心(胴体)の高さによって変わってきます。
まずは重心の高いコマ=踏めてない人。
重心の高いコマはアルファベットのAの形の歳差運動になります。
円錐(えんすい)です。
軸は下に大きく振れるからバランスが取れません。
体幹から足にかけてブンブン大きく振り回されます。
それを力で止めるには体幹トレーニングが必要でしょうし、腹圧を入れる必要もあるのでしょう。
脚の筋肉は自然とムキムキになります。
これが日本人の体幹が弱く脚が太い原因です。
床から重心の距離が長いので回ることには恐怖心があります。
前回書いた踏めない人のテコを回転させたものに近い形です。
次は重心の低いコマ=踏めてる人。
重心の低いコマはアルファベットのVの形の歳差運動をします。
逆さまの円錐です。
安定してバランスが取れ、スピードが遅くなると軸は上に大きく振れます。
前回書いた踏める人のテコを回転させたものに近い形です。
(ただしバレエ本来の体の使い方と違う方法で回る人もいるので、ピルエットが得意=床が踏めている。ではありません。)
次は高いコマと低いコマの中間のコマです。
両者の中間はアルファベットのXの形の歳差運動になります。
軸は上下均等に振れる。
バランスの取りやすさも重心の高いコマ、低いコマの中間。
ただし、軸が振れて描く円はやや小さい。
大人になってからバレエを習っても上手くならないのは、すでにAバランス(円錐バランス)の体になっているためです。
床を踏むバレエダンサーとは逆の体なのです。
本当にバレエが上達したいならAではなくVバランス(逆さ円錐バランス)の体を作る必要があります。
コマは歳差運動によって姿勢を維持しているので、歳差運動を出来なくしたコマは立つことが出来ないそうです。
倒れる→歳差運動→立ち上がるを繰り返しています。
これは以前ブログに書いた「バレリーナは常に倒れ続けながら、同時に伸び続けているのです。不安定にすることで安定しているのです。動的平衡です。」という文章と同じです。
「重心の転がり」があるから倒れられます。
バレエダンサーは完璧にバランスを崩し続けている(球で転がっている)から、バランスを取り続けることが出来るのです。
海外の劇場の床が傾斜しているのも、常にバランスを崩すため。という意味もあるのでは?
バランスを取るのが得意なバレエダンサーとは、歳差運動が上に広い人=軸を倒せる範囲が広い人=バランスを崩せる人=床が踏めている人です。
バランスが取れる人は頑張っているからバランスが取れているのではなく、バランスが取れる体だからバランスが取れているだけです。
バランスが取れない人は、バランスが上方向に崩せないからバランスが取れないのです。
努力が足りないわけではありません。
これはピルエット以外のバランスすべてにあてはまります。
自分の歳差運動の振り幅以上に動こうとするなら体幹トレーニングが必要ですが、それは私の理想とするバレエとは違います。
そうやって無理して大きく動いても、踊りに立体感が無く見えるからです。
続く。
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