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バレエの手の形

先日、ピアニストの方へのパーソナルレッスンで面白いことがありました。


ピアノを弾きやすい体に変えていくトレーニングをいろいろとやりました。

相手の体を見て、さわって気になる部位を改善していきます。


その日は、仙腸関節の動きを良くして、首が正しい位置になるように調整して、重心移動ができるようにして、肩や背中が正しく使えるようにして…。

そういったことをやっているうちに、いつのまにかその方が無意識に「バレエの手の形」をしていたんです。


その方は男性ピアニストでバレエ経験はありませんし、私がバレエの手の形を作るように指導したわけでもありません。

その方の手が、勝手に「バレエの手の形」になっていったのです。


これがバレエの発生です。

人間の体には元々バレエの動きが内蔵されていて、それが一定の条件を満たした時にあらわれると私は考えています。

だからバレエは自然な踊りなのです。

体にとって不自然で無理な動きを意識的にしているわけではありません。


大昔にイタリアでバレエが誕生した時も自然発生的に、あの手の形になっていったはずです。

自然発生的になる手の形なので、バレエ以外の分野でも見られます。


例えばメロイックサイン(コルナ)です。

ヘビーメタル、ハードロック系のミュージシャン、ファンのジェスチャーとして知られていますが、起源は古く、国によって意味も違うようです。

人間のしぐさ、ジェスチャー、癖には必ず意味があるので、そういった部分に注目することは大切です。


一般にバレエ教室で手の形を習う時は「親指と中指を近づけて、肘はこれぐらい曲げて、手のひらはこの角度で…」と、ただ単に表面的な「形」で教えられることがほとんどだと思います。

バレエを習う&教えるとは、正しい形を作り上げていくものだと思っていることでしょう。

それがバレエの基礎だと。


ですが、今まで読んできてわかるように「バレエは形ではないのです」


ピアノもバレエも形さえ似せていけば「それっぽく」はなります。

この「それっぽく」から抜け出すには、体を変えるしかありません。