前回、前々回と日本人が「知らない」バレエの立ち方の説明をしてきました。
何故知らないかと言うと、ほとんどの日本人が「出来ない」バレエの立ち方だからです。
バレエ指導者は、指導者自身の体で出来ることを教えています。
ですが自分の体で出来ることが必ずしも正しいわけではありません。
日本人は踏めない人が多いため、日本の大半のバレエ教室では「ボールを落とさない」ということを教えます。
それが「引き上げ」です。
落とさずに、上に引っ張り上げます。
バレエを踊るためには理想的な股関節の位置というものがありますが日本人のほとんどは、そこに股関節が無いので、引き上げることで股関節を理想的な位置に近づけます。
この引き上げは繊細で難しく、体力を使います。
問題は、引き上げ自体では5番に入らないことです。
5番に入りやすくはなっても、自然と5番に入るようにはなりません。
おなかをまっすぐ上に引っ張り上げるので上半身は「1番の上半身」のままです。
これはバレエ本来の立ち方ではありません。
動作原理が違います。
ここが、しなりで踏むバレエとの決定的な違いです。
しなりで踏めば、自然と5番の体になり、踏んだだけで5番に入ります。
これこそバレエ本来の立ち方です。
皆さん、バレエをやっていると「(海外の一流バレエダンサーと自分を比べて)形は同じだけど何かが違う」と感じることがあると思います。
「何かが違うのはわかるけど、具体的に何が違うかは、わからない」という状態です。
この違いは、立ち方が違うことが原因のケースが多いです。
立ち方が違うということは交差点の高さが違うのです。
一般的に人間は成長して年齢を重ねると、交差点の位置が上がっていきます。
膝が曲がり、つま先重心になり、踵が踏めなくなり、逆パラボラになっていきます。
その反対に体を変えていくバレリーナは人間の例外と言えます。
しなりで踏むバレリーナは、姿勢のコントロールやバランスのとり方が普通の人とはまったく違います。
最近はこういったことをまったく理解していないトレーナー、理学療法士、s&cコーチ、整体師、医療関係者などが「君たちバレリーナはおかしい、間違っている、科学的ではない」と言うようになりました。
そういった影響を受けてバレリーナは普通になりつつあります。
普通の人間用のトレーニングをするから、普通の人間になってしまうのです。
人間の例外を作る方法が、しなりを転がして床を踏むということです。
日本のバレエ界で一般的に正しいと信じられている立ち方とは違うので、文章で読んでも意味がわからないかもしれませんが、実際にレッスンを受けているうちに感覚でわかるようになるでしょう。
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