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ホロヴィッツの手首はどこにあるのか?

おそらくホロヴィッツは前回書いたAの位置を手首として使っているのではないでしょうか。

この位置に支点があると、バレエなら背中から腕を動かせます。

腕に重みが生まれます。腕が重いので、自然と体の中心から動かすようになります。

 

誰でも子供の頃、鉛筆の3分の1辺りを手で持って揺らして、ぐにゃぐにゃさせる遊びをやったことがありますよね?

あれの手で持つ位置が支点です。

 

ホロヴィッツの感覚的な手首の位置は、普通の日本人の手首の位置と違う可能性があるのです。

手首だけでなく、足首の位置感覚、脚の長さの感覚、ウエストの位置感覚…そういった身体感覚が天才と凡人ではまったく違うのです。

ショパンが「手首はエンジン」と言っても、ショパンの手首とあなたの手首の位置が感覚的に違ったら、ショパンの言葉の意味を理解できません。

 

天才も凡人も自分の感覚が普通だと思っていて、他人と違うことになかなか気づけません。

白人が「正しい」と言ったことを、そのまま日本人に当てはめても上手くいきません。

 

手首や手のひらに巻いたほうが弾きやすい方は末端に意識があり、指先が器用です。

それはロシアピアニズムの体とは違います。

人間は手先を使ってるうちに手首の感覚が先端に移動していきます。

日本的なハイフィンガーの人は手首に巻いたほうがやりやすいかもしれません。

普段から腕時計をしていて、そのことに違和感が無い人も指先に意識があります。

バレエだと手首に意識があると、小手先だけの安っぽい動きになってしまいます。手を綺麗に動かそうという、本人の意志とはうらはらに。

 

身体が手首を関節として認識してしまうと良くないのです。

そうなると手首を手首としてしか使えません。

単なる手首の掌屈背屈、単なる筋肉運動、単なるピアノ体操になってしまいます。