ロシアピアニズムと私のバレエの動きは同じなので、脚を腕に当てはめてホロヴィッツの感覚を想像してみました。
私のバレエでは内ももからつま先まで全部が踵のような感覚、内ももからつま先までが全部足の裏のような感覚があります。
足首を足首として使わず、膝を膝として使いません。
関節を関節として使っていません。
ホロヴィッツは腕から指先まで全部が手首、もしくは手のひらのような感覚があると思います。
そして、手首や肘が無い感覚もあると思います。
このようになるのは上半身の重みがしっかりと手のひらにかかっているからです。
四足歩行している動物のように前脚(腕)に体重がかかっているんだと思います。
上半身の重みがかかることで、手のひらはフルストレッチされてバネみたいになります。
それは手のひらや指が反り返るような感じです。
バネなので手首を下げれば下げるほど、手首が勝手に上がりそうになります。
自然と腕に波が生まれ、その波は自然と絵のような永久に続く円運動になります。
円運動なので打鍵後に指が鍵盤からあまり離れません。
体の前に球体があるような感覚です。
ボディにも波がありました。
見た目にはわかりづらいですが。
もう1つの絵は鍵盤の表面上で上下に動く指。上向き矢印と下向き矢印の人。
ホロヴィッツ以外のロシアピアニズムの方も何人かYouTubeで見たのですが、人によっては上下に動く人もいました。
ただし、それは上下別々の動きではなく、はずむような上下一体の動き。
そういう人はボディにも上下のリズムがありました。
ホロヴィッツは、波だから弾いても弾いても次の手がどんどん生えてくる、手が途切れない。
それはホロヴィッツにとって自然なことなので「あなたはどうやって弾いているのですか?」と質問されても「ただ吸って吐いて呼吸しているだけだよ」と答えそうな予感がします。
ホロヴィッツは手首が下がっているのではなく、少し低い位置の鍵盤を弾いているような感じです。
海の波が海底の砂をけずるような感じ。
現実の鍵盤の位置に鍵盤を感じているのではなく、もっと空間を感じているのではないでしょうか。
バレエの「床を踏む」は「踵を踏む」と表現することもあります。
踵を踏むと踵が上がりそうになります。
水平な床に立っていても、つま先が上がって踵が下がる感覚があります。
ハイヒールの逆です。
同時にハイヒールを履いている感覚があります。
余談ですが、女性でハイヒールを履いて上手く歩けない、膝が曲がってしまうという方がいたら、その人はロシアピアニズムの練習をしてもなかなか上達しないでしょう。
その人は重心移動が出来ていない、踏めてない体です。
ロシアピアニズムの体ではありません。
ホロヴィッツの感覚だと、手首は見た目よりさらに下がっていて、そこから反り返った手のひら→指先とエネルギーが通過していく感じだと思います。
本人はその感覚が普通すぎて、自分がどうやって動いているか、あまりわかってなかったかもしれませんが。
本人の意思とは関係なく勝手に腕が動いているのではないかと思います。
私はホロヴィッツの自我を感じさせない透明な音色にびっくりしました。
空気に溶けちゃいそうな音色でした。
本当の天才というのは「なんで私はここにいるんだろう?」「気がついたらここにいました」というような体です。
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