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下部雑音を鳴らさないために

「下に落ちてしまう手を、落ちすぎないように引き上げよう」と浮かせる力(上に上げる力)を使ってしまうと腕が軽くなってしまいます。


そうなると腕を下げ過ぎず、同時に上げ過ぎず、中途半端な力加減をさぐりながら弾いているようになります。

これだと前腕の外側の伸筋ばかり発達しませんか?


バレエでいうと脚を上に上げようとするほど、上に上げるための外側の筋肉が固まり、股関節がつまって可動域が狭くなるので、脚は上がりづらくなり痛めます。

ピアノも同じでは?


「下部雑音がしないように鍵盤の浅いところを狙って弾かねばならない」という「~しなければならない」意識からは、優秀なピアニストの優秀な音しか生まれません。

狙って弾いているようでは天才ではないと思います。


もしかしたら、ロシアピアニズムの天才は音を「響かせよう」なんて意識していないかもしれませんよ。


勝手に響いてしまう体を持っているのです。


例えばボディビルのトレーニングで。

背中のトレーニングの時は「背中を意識しましょう」「背中に集中しましょう」という教科書的なアドバイスが昔からあります。


「意識したら効きますよ」という考え方です。


でも実際に背中の筋肉を使えてない体の人が、いくら意識しても効果なんか無いわけです。

心を込めてトレーニングしても無駄なんです。


勝手に効いてしまう体を作れば良いのです。


ロシアピアニズムは転がりからの波、波からの転がりなので、波が通過するように弾けば鍵盤の底を押し過ぎる、弾き過ぎることは無いので、自然と下部雑音はしないのです。

意識的に気をつけるようなことではありません。


なぜなら指先が鍵盤を弾いた瞬間には、すでに指先が上がり始めているからです。


むしろ意識的に出来たらそれは超絶技巧です。


続く。